前日の雨予報は予報にとどまり、太陽に恵まれた暖かい気候のもと、森の再生活動 10月講座が開催されました。
今回は、『国連生物多様性の10年市民ネットワーク代表』の坂田マサコさんと、主催する『坂田の杜』メンバーの皆さまにも参加いただき、総勢18名での講座となりました。
『坂田の杜』メンバーの方々は、生物多様性について関心が高く、オンラインディスカッションやオフラインでの交流を通して学びを深めていらっしゃいます。坂田マサコさんが、大地の再生の矢野智徳さんと旧知の仲であり、大地の再生をご存知。メンバーのみなさまが大地の再生にとても興味を持たれており、『坂田の杜』チームで予定されていた藤野ツアーの一環で、当講座にご参加いただきました。
座学『大地の再生について』
参加者それぞれの自己紹介を行ったあと、まずは『大地の再生 関東甲信越』藤井麻紀子さんから、大地の再生の手法や考え方、環境改善のBefore・Afterなどを資料や画像を用いてご説明いただきました。
「人はどこかで自然に焦がれている」
「人は、水をひとつに集めて、高いところから低いところへ流していくが、本当は、縦に横に浸透したり流れたり、蛇行して流れるもの」
「昔の人は感覚的に、水と空気の浸透と循環を作っていた」
「植物は健気。植物や自然を大事にしたい人がいて、その人たちが環境を変えて、整えてあげれば、それを感じて育ってくれる」
などなど。
土木施工に関する技術や考え方に関するお話しでしたが、藤井さんが男性の職人さんばかりの現場に入り込んで、作業を経験する中で培われた表現が説明のいたる所に散りばめられており、参加者にとってわかりやすい講義でした。
ちなみに、、山の斜面や水路、砂防ダムなど、コンクリートで施工されていますが、その内部の土は空気と水の循環が滞留して弱る(腐る)一方。土の色が青や緑に変色していくとのこと(グライ化というようです)。
しかしこのグライ化した土は、空気と水と太陽に触れると、栄養価の高い土に変わるようで、大地の再生では環境整備の過程で出てきた土を捨てずに再生して利用しているとのこと。他にも、コンクリートを壊した瓦礫や、地面を掘って出てきた石、間伐した枝木もすべて、捨てずに環境整備の材料として利用されているようです。
※↓は講座で使われた資料(一部のみ)です。
風の草刈り
藤井さんはこの『風の草刈り』に出会い衝撃を受け、『風の草刈りし隊』を立ち上げて風の草刈りにのめり込んでいかれたとのこと(8時間草刈りし続けてカラダを壊したというお話しも。笑)。
『大地の再生』矢野智徳さんの『風の草刈り』の動画を講義の中でご紹介いただきました。
一通りの講義を聞き終える頃には、参加者一同「そろそろカラダを動かしたい!」とウズウズ、ソワソワ。今年の4月から講座の度に風の草刈りを行ってきた山の斜面に行き、全員で実践してみました。
作業をしながら、その場その場で坂田さんによる植物や生物、環境に関するガイドがあり、学びを深めていきます。
苔は「風を好む」。切り株や石に生えている苔を見れば、その場所を流れる風が見れるとのことです。
点穴掘り
昼食後は森の最下段、川に面するコンクリート壁の際へ『点穴』を堀る作業へ。
コンクリートにより水と空気の流れが止められているので、コンクリートを壊せばよいかというと、そうではない。壊すことで周辺環境への影響(反動)が大きく出るので、今そこにあるコンクリートとの『共存』を考えていくことが大事な考え方です。
コンクリートと地面の際へ、深さ50cmの点穴を掘って、土中の空気を抜き、雨水の縦の浸透を促進していきます。
穴をあけたままだと、周囲の土圧ですぐさま穴が崩れてしまうので、枝木によるシガラミを作って土圧を支える。そして炭と藁を入れることで土中の微生物や菌の発育を促します。
掘り起こして出てきた石も活用。掘った点穴に、自然に転がって落ちたことをイメージして、入れ込みます。
葉のついた枝木を組み込んで、泥が穴の中へ入り込まないようなフィルターに。
最後は、落ち葉で周辺のグランドカバーを。
2,3名で協力して、点穴掘りとシガラミ作り。短時間でコンクリートの際一面に点穴ができました。
最後は、藤井さんがひとつずつ点穴を見ながらポイントを説明。
点穴に枝木や葉を詰めすぎると空気が通らない。上から見たときに、枝木の隙間から穴の下部が見えるような感じ(空気が通っているイメージ)を持つとよいとのことでした。
CoToLiの森の多様性について
点穴とシガラミ作りに参加者が勤しんでいる間に、坂田さんは森の中を観察。
紅葉などいくつもの広葉樹の小さな芽が出てきているとのこと。これを聞いた施主さん(CoToLiの森の持ち主さん)、そして参加者は、森の環境改善の効果と、作業を続けてきたことへの手応えを感じることができました。
1時間ほど、森の中を歩きながら坂田さんがガイド。菌の種類と働き、苔との関係性、植物と水脈の関連性などなど。あっという間に時間が過ぎる感覚と、贅沢過ぎるほどの情報量に、参加者みな満足。
地面に生えている植物を見ることで、土中の水の流れが読めることを教わり、次回以降の作業場所の見立てを得ることもできました。
「わからなかったら自然に学ぶ」
「うまくいかなければ、自然を見にいけば良い。自然が教えてくれるから」
良い言葉をいただきました。
おわりに
最後は、全員で感想をシェア。
大地の再生と生物多様性について、藤井さんと坂田さんから様々な説明をいただきながら、現場で作業。参加したみなさまは時間の経過を忘れるほど、豊かな時間を過ごせた模様です。
「今まで得てきた知識が、今日の座学と実践で腹落ちした」といった方もいらっしゃいました。
『人の手で、子どもや女性でもできる作業』を地道にコツコツ続けていくことで、実際に森が、自然が変化していくことを体感できた1日となりました。
次回は、11月中旬に作業DAY、12月中旬に講座を予定しています。