前日からの雨により開催かどうかの不安がありましたが、午前中で雨が上がる予報だったので予定通り5月講座を行いました。
雨模様のスタートにも関わらずキャンセルは数名に留まり、15名の方にご参加いただきました。
座学
若干の雨が降り続いていたため、山主さんの車庫をお借りして座学からスタート。
講師の藤井麻紀子さん(大地の再生 関東甲信越)より、日本の山地形において、降った雨が山から川を辿って海まで流れていく過程を辿りながら「今起きていること」をパネルで説明いただきました。
また、合理的な土木施工を繰り返してきたことで山の空気と水が詰まり、これにより樹木が弱り、ナラ枯れを引き起こす要因のひとつとなっている点もお話しいただきました。
いくつかポイントを箇条書きでまとめておきます。
- 日本は山と谷があり、急峻な場所。水と空気がすごく動く場所、ここに住んでいる。
- U字側溝や三面張りの河川など、現代の(水を流す)川の機能は人工物に置き換わっている。排水機能はしっかりしているが、下流(海)へ水を流してしまうので、地表に水が浸透していかない構造。
- 昔は地面へ浸透して行った養分も吸収されず、コンクリートの表面を通じて海へ流してしまう。
- これら人工物には排水のキャパシティがあり、これを超えると溢れて周辺の地形を壊す(コンクリート張りされていないところへ集中的に水が押し寄せて土砂災害になる、など)。
- 海は平地で人が集まりやすい場所。本来は山で吸収された水の出口となるところだが、ここに人が多く住む(コンクリートで地面が覆われていく)ことで遮断されていき、水が詰まる(地中に溜まる)。
- 藤野は沢筋に家がたくさん建っているので、水が溜まりやすい構造。ハザードマップで黄色いエリアでありながら土砂崩れが起きているのは、ここ(家が水の出口を塞いでいる)に要因があるとみている。
- 整備の追いつかない場所をキャンプ地(グランピングなど)へ造成していたりする。人目線の楽な道づくりがなされており、自然目線が考慮されていない。水の通り道が分断されたり塞がれたりするので、より崩れやすい構造になっている。
- 自然目線で水と人が互いに循環する社会にしていくことが必要。
風の草刈り
座学のあとは雨も上がり、山の現場へ入りました。
まずは『風の草刈り』を行って、大地に水と空気の流れを作ります。
斜面の地形が変わるところには風があたるので、この部分の草を刈って空気を動かします。
空気と水は連動しており、空気が動くと地中の水も動き始めるようです。
平地にも、地中で水が溜まっているところがあり。
この水を動かすために、風の通り道を見つけて、その通り道を作っていきます。
平らな場所では、目で見ると、植生が低くなっているところがあります。
ここが風の通り道なので、そこをポイントにして、風の気持ちになって、水の気持ちになって草刈り。
草刈りを終えると、山の斜面を上から下へ風が流れていくようになりました。
斜面変換線の整備
午後は毎月整備をしている東側の斜面変換線に着手。
斜面をよく見ると、下草がなく泥水が滑り落ちている(水が流れている)部分があるので、土留めを入れて表層を流れ落ちていく泥を止める処置を行いました。
斜面に点穴を入れていくことで水の縦浸透を作れますが、流れ落ちていく泥を止め切ることはできないので、土留めでしっかり泥濾し機能を設けます。
人の手作業で力を使わずに作れる土留め。『こびとの土留め』と呼んでいます。
斜面変換線のところに水の通り道を作っておきましたが、水路として置いていた丸太が水を詰まらせているように見えたため、この丸太を取り除きました。
取り除いたあとは、南側の沢へ向けて水の通り道(水脈)を繋げます。
作業後の水脈はこうなりました。
平地を見渡すと、水の通り道となっているであろう『溝』がいくつも確認できました。
これらの溝を沢まで繋げていき、平地に溜まっている水の通り道を作りました。
掘り出した土や泥には、炭・薫炭・落ち葉を敷いて、水と空気が通りやすい土の状態に(敷場というそうです)。
丸太が敷かれていたところから取り出した泥は、広い場所に移動。
笹・炭・薫炭・落ち葉と泥を何層にも重ねていきます。
他の部分より少し高い丘のようになりますが、山と川のある自然な地形に近づけた感じです。
排水機能を改善したことで、この場所が来月以降どのような状態に変化していくのか?楽しみです。
しがらみポーズ
雨が上がったあとは高温多湿な環境でしたが、怪我人など出ず無事に作業終了。
昨年(2021年)CoToLiの森での作業で編み出された『しがらみポーズ』で締めました。
次回は作業DAY、2022年6月11日(土)に開催予定です。
講座は7月中旬を予定していますので、日時など具体的な内容が決まり次第、当HPやSNSにてお知らせします。