9月に開催した大地の再生講座以降、地域の人と管理人さんが有志で集まり月に1回ペースで作業を続けてきました。
今回は、9月以降に作業してきた場所の状況チェックと、来春に向けた作業場所の見立てや作業方法の実践レクチャーでした。
>>9月の講座レポートはこちらをご覧ください
大地の再生の視点で見たナラ枯れが発生する仕組み
今回が初参加のスタッフさんもいらっしゃったので、前回の講座で利用した『なぜナラ枯れが発生するのか?それに対してどのような対処ができるのか?』を大地の再生視点で考えた資料を使って説明していただきました。
ポイントをまとめておきます。
- コンクリートは耐圧に優れているので土圧を支えるのに適しているもの。便利さに意識を向けすぎて至るところにコンクリートを貼りすぎてしまい、地面の空気と水が詰まっている。
- 土が呼吸できなくなり、締め固まり、ガスが溜まる。これにより根腐れや枯れが生じている=不健康な状態、免疫の落ちた状態。水や空気の遮断が影響していると見ている。
- 木がこのような状態なので、ナラ枯れを起こすムシが穿入しても跳ね返すことができない。たまたまナラの木で起きていることにフォーカスされているが、山全体の木々が不健康な状態になっている。
- これらを改善するには、土中環境の改善が必要だが、コンクリートが悪い=取り払うといったゼロ百の話ではなく、コンクリートの良さを残したまま、その周辺にうまく抜きの機能を入れていくことで共存ができる。
- 例えば、風化したコンクリートの目地に割れ目を作って、炭を入れて空気と水が通るようにする。U字側溝の隣に点穴を開けて空気の抜きと水の縦浸透を作るなど。
- 斜面変換線、等高線上は空気と水が一番動きやすい場所。昔の人は排水マスを作っていたところ。この部分の草を刈り、藪を払ってあげることで空気の動く場所を作ってあげるのも有用。
- 土砂災害などから身の安全を守ることを、自然の協力を得て行っていくのが良い。
- 自宅においては、敷地に降る水を敷地に吸収していくことで、水害を防ぐ手段になる。
30分くらいご説明いただいた後、作業に移りました。
事務所周辺の環境整備
当初は斜面地への土留め施行を行う予定でしたが、水の出口となっている事務所に、山全体の水が落ちていて「溜まり」になっているようです。
植栽もべったりしており、雨の度に土が泥状になって流れて落ちてくる状態なので、点穴を掘って抜きの機能を設けることにしました。
9月以降、斜面の上部にある水の通り道の改善を進めていましたが、ここは水の入り口。
事務所が出口にあたり、この入り口と出口の両方を処置していかないと効果が薄く、入り口側の処置も腐りが早くなってしまうようです。
ということで、事務所裏側にあるU字側溝の横に点穴を施します。
ダブルスコップで深めに掘ったところに薫炭、炭を入れ、土圧を支えるために枝木を入れます。
葉のついた枝も差し込み泥越しの機能を設けました。
植栽の周りには水脈を掘り、小さな点穴も入れています。
植栽のマウント部分を山に例えると、周りの水脈が川となり、小さいサイズの山谷地形が仕上がります。
これにより空気と水が動き始めるので、植栽が回復するようです。
ここにある桜は、斜面の角地にあり。
この部分はちょうど空気と水が交わる場所で、この桜の根が斜面地を守ってくれているので、大事にしていく必要あり。
この周りにも点穴を作り、斜面の際には水脈を掘りました。
土圧を支えるための枝木はこの場所で伐採したものを利用。
その場所にあるものを使うのが、その場所にとっては1番良いとのこと。
仕上がりがこちら
植物はこれから冬籠りの時期に入り、安息状態になります。
根に栄養がいくので、今行っている作業が来春の芽吹きに効いてきます。
冬は水脈整備が一番効果の出る時期のようです。
事務所からコース上部へ向かう坂道の整備
午後は「雨が降ると滑って危ない」と言われている、事務所横の坂道の整備を行いました。
水の出口にあたるところで、上の方から流れてきた雨水が集まってくる場所。
泥水で表面が詰まり、人の往来で更に踏み固められているため、雨水が地面に浸透しない状態になっています。
出来れば土留めの階段に切り替えたいところですが、リアカーの通り道なので段差を作ることができません。
そこで、両サイドに深めの水脈を掘り、数メートル間隔で点穴を入れました。
コース周辺に生えていた笹を取ってきて、水脈の泥越し機能に用います。
さらに斜面上に『水切り』を入れて水を縦に浸透させる処置をしました。
斜めに溝を入れて炭で埋めます。
ここも枝木を入れたいところでしたが、歩行者がつまづいて転倒するリスクがあるため、炭のみにしています。
溝を掘ることで大量の土が出ますが、これらの掘り出した土は運び出して、土留め柵を作り、枝葉と土を何層にも重ねて敷場にしました。
捨てることはせず、全ての材を活かす考えがこのようなとこりにも活かされています
滑り止めに敷かれていたマットは水と空気を遮断してしまうため、剥がして、固まっていた土は貢ぐわでほぐしました。
仕上がりがこちらです。
今後、雨が降った後の状態を観察し、水脈や水切りの補修を適宜行っていく予定です。
9月に作業した場所のチェック
作業の合間に、9月の講座で作業した場所の状態チェックを行いました。
コース上の斜面変換線に水脈を施した場所は、少しずつ土質が変わってきたようで、水脈のまわりに下草が生えてきていました。
土も処置前は滑り気がありベタついていたようですが、それもいい具合に湿度を保った土に変わってきたとのこと。
数ヶ月ですが場の変化を体感し、「草が生えてきた、土が変わった」と変化を口にするゴルフ場スタッフの人たちが印象的でした。
来春に向けた作業のポイント
15時半となったので本日の作業は終了。
これからは「コースに水が溜まらないようにする処置」を継続していくことが重要。
水の入り口と出口をそれぞれ処置を行うことを念頭に、コースの斜面に点穴を入れていくのが良さそうです。
一部のエリアのみ集中するより、作業場所を分散させていった方が大きな失敗なく進められるとの事。
処置後の場の状態を観察しつつ、学びながら、コツコツと改善を積み重ねていければと思います。