小渕の山の環境改善を始めて1年が経過したところでの大地の再生講座。
>>1年前(2022年3月)の講座レポートはこちら
初参加の方が半数以上いらっしゃり、映画『杜人』をきっかけに大地の再生の認知が広まっていることを実感しました。
最初は座学から。
昔と今の家作りを例に、空気と水が遮断される影響を学びました。
本来、水は大地や植物にたくさんの栄養を与えてくれるものですが、コンクリートの三面張りやU字側溝により、地面に浸透することなく排水させていくため、これらを海まで引っ張ってしまいます。
泥も本来は山に留まるものの、これらも海まで流されていくために、この泥が海底の湧水を詰めてしまいます。
湧き出る部分が塞がれるので、水は逆流し、山の水脈へと戻っていきます。
これにより、山の表面は乾き、地中がグズグズになります。
水と空気が遮断された土は「グライ土壌」となり、この暗いグライ土壌が自然地形の中に増えていっているそう。
地中の根が腐り、大きな雨が降ると簡単に中から崩れる状態。
藤野で起きた土砂崩れは、このかたちが多いようです。
座学を終え、現場へ。
作業時の安全のためにと、地元のお婆さんが作ってくれた『どんぐりお守り』を参加者さんへ渡し、山主さんが用意してくれたおはぎを食べて現場に入りました。
午前中の作業は、平地の水脈、点穴作り。
移植ゴテや三角ホーを使って小さな穴を開け、そこに炭と薫炭を入れていくことで、笹や草に空気が入り繁茂しにくくなります。
斜面変換線に5年以上前に作られた水脈があり、ここの掘り直しにも着手。
掘り上げた土は、土留めを用いたマウントにしていきます。
詰んだ土が雨で流れないよう、丸太で止めました。
ここに桜などの苗木をいくつか植えて、植栽マウントにしていければと思います。
昼食は広場で。
江戸時代に造られたといわれる溜池の跡地に興味を持たれ、休憩時間中に訪れる方も。
2月に既存物を整理し、水脈を作っておいたところを水が流れていました。
>>2022年2月の溜池跡地の整備レポートはこちら
午後は沢整備へ。
水の出口にあたる部分ですが、コンクリートの道路と側溝で水と空気が遮断。
大雨が降るとオーバーフローしていく状態で、側溝の周辺は土が抉られています。
沢の中は、長年そのままにしていたため、竹が倒れて鬱蒼としています。
この沢の奥に大きな砂防壁があり、これが沢周辺の詰まりの大きな原因になっているとのこと。
そこへ向かって、沢の既存物を整理していきます。
竹や流木を沢の斜面へ寄せながら砂防壁へ到達。
本来、この沢は風が抜ける場所のはず。
しかし、この砂防壁に土が溜まり(従来の沢の底から1メートル以上、土が溜まっている状態)大きな詰まりが生じていました。
それでも水は下流へと流れたいが、行き場を失い、壁の横を抉って崩していきます。
砂防壁の周辺は竹が繁茂。
水が溜まって根腐れしている中、竹がかろうじて生えている状態です。
このあたりは有機ガスが溜まっているため、たくさんの蚊や虫が飛んでいました。
竹は地中と地上を繋ぐホースの役割を担っており、空気と水を抜いてくれます。
しかし水の出口が塞がっているために、竹は「早く水と空気を抜こう」とするために、生えすぎる。
生えすぎたからといって、これらの竹を全て払ってしまうと土砂崩れが起きます。
この薮を整備して、沢に空気と水が通るようにしてあげると、綺麗な場所に変わっていくようです。
このようにして『脈』を整備していくことで、本流の水も変わってくるとのこと。
「ほんの一部、些細な川の整備であっても、これが地域全体に効いてくる。地域の人たちで進め、続けていくべきこと」
講師の藤井さんからのメッセージです。
今日の講座はこれで終了。
「自然地形を見つけて、心地よい場所を増やす」
講座で得た気づきや学びを、それぞれが自分の場所で実践していただければ良いです。