風と水の流れる森づくりで課題となっていたのが、炭と焼き杭の調達。
山の手入れにおいて、水脈や点穴、土留めなどをいたる所に施していきますが、環境改善を促進するために炭を用います。
斜面に土留めを入れますが、水気の多い部分で使うことがあるので、打ち込んだ杭が早く腐りがちです。
ここを焼き杭にすることで持ちがよくなりますし、菌糸がつきやすくなって環境の改善が進みます。
これらの資材の持続的な調達方法を検討するために、沢や竹林の整備で集められた竹を燃やして竹炭にし、間伐木で作った杭をこの火を使って焼き杭にすることをトライアルで行ってみました。
まずは、ドラム缶を2つに割り、蓋の部分を取り除く工作から。
片方の蓋をくり抜くことで2つのドラム缶を縦に繋げられるので、長い竹でも切らずに燃やせるようになります。
また、このドラム缶の楕円がうまく空気を対流させ、周りに燃えかすが広がらずにコンパクトな炭焼きを可能にします。
杭に用いるスギやヒノキの枝は皮を剥いておきます。
焼き杭にするとき、皮があると芯の方までしっかり炭化しないため、手間がかかりますが前工程の処理として行ないました。
剥いた皮は、今後作業をした場所でグランドカバーとして用いるためにストックしておきます。
ここからは焼きの作業です。
着火剤はスギの葉っぱを利用し、そこに竹を投入していきます。
ちなみに竹は、3月の講座で沢整備をしたときに出た大量の枯れ竹を使いました。
長年放置されていた甲斐あり、どんどん燃えていくので、ドラム缶の中に次々に投入していきます。
そうしないと、燃えすぎて灰になってしまうからです。
ここに杭を投入して焼き込んでいきます。
杭が一緒に燃えることで火力が上がり、うろこ状になった焼き杭も次々に仕上がっていきました。
ホイルに包んで焼き芋も作りました。
作業中に食べると、さつまいもの甘味が格別に感じます。
竹をすべて焼き切り、大量の水をかけて火を消します。
数メートルのスペースに積まれていた竹が、ドラム缶2個分に。
竹のままではスペースを取り、量も多いので加工して使いきることも難しい。
ゴミとして出すには小さくカットしなければならず、これも重労働となります。
困った存在として見られる方が多かったものが、燃やして炭になった途端、山を助けるとてもありがたい存在に変わりました。
保管のスペースも竹の状態の数分の一に収まり、保存もききます。
ドラム缶を用いた炭焼きであれば、ドラム缶の移動も簡単です。
竹林整備をした場所に持っていき、そこで焼いて炭にすることができれば、材として循環し、結果、竹林整備も進むのではないかと感じました。
この山では、今後も沢や竹林整備を進めていくので、枯れ竹は発生します。
放置されて行き場を失った枯れ竹は、朽ちていく過程で竹の中に固定された炭素が分解され、ゆっくりと二酸化炭素に変わっていきます。
これを炭にすることで、二酸化炭素を長期にわたって炭素の形に固定できます。
さらに、枯れ竹が存在して植物が育たなかった場所に新たな植物の生育環境が生まれ、二酸化炭素を吸収するきっかけが生まれます。
この竹炭作りは一気に大量の二酸化炭素を固定させ、新たな吸収源を作りだす、一石二鳥の作業でもあるのです。
春夏の作業でまとめておき、冬の時期に炭焼きをする。
冬なら暖を取ることもでき、焼き芋などもその場で食べられ、楽しいイベントのようにできそう。
こうして炭、焼き杭を冬のあいだに大量に作り、これを春夏の作業で使う循環が作れそうです。
今年(2023年)の11月から2023年2月にかけて実施していければと思います。