小渕の山での活動、3年目を迎えました。
現場の山から国道とJRを渡って下ったところにある、山主さんの田んぼを一枚お借りして、田んぼ作りも行うことにしました。
田んぼに流入している沢の上流は、山の現場と繋がっていませんが、地下水脈では繋がっているであろうと考え、山の上流から湖のある下流までの治水、水の流れを学ぶ場としていく予定です。
田んぼの水路清掃
今年の田植えに向け、沢から田んぼへ水を流すための水路清掃と、水路作りを行いました。
パイプで取水した水を田んぼへ流す水路に落ち葉や泥が溜まっているので、それを移植ゴテで掻き出します。
掻き出したところを水が流れ、田んぼへ。
田んぼには2箇所から水を入れられるようになっており、水の道を掘りながら全体に水が行き渡るようにしていきました。
4月末に芽出しした種籾を撒くための苗床にするため、畝を作って仕切りを入れていきます。
足踏みして畝を作り…あとは水が全体に行き渡るのを待ち、翌週に代掻きへと進んでいきます。
沢からの取水部分、斜面が崩れかけているため、水路に泥が溜まりやすい状態でした。
付近に梅の木の剪定枝が大量にあったので、これを用いて土留め。
仕上がりに、山主さんも喜んでいらっしゃいました。
水路作りを終え、フィールドワークを行いながら現場の山へと移動を開始。
山主さんから「生活道路を挟んで南側に、水が湧いている場所がある」と伺い、現地をチェック。
道を挟んで北側の沢が枯れても、南側の沢は水が流れ続けており、山主さんの見立てでは、私たちが2年間作業をしている山・沢と地下水脈で繋がっているようです。
これからも環境整備を続けていくモチベーションになりました。
山のフィールドワーク
午後は山のフィールドワーク。
これまで作業した場所を一通り確認したのち、改善が必要な場所の見立てを兼ねて山頂まで登ります。
まずは、数年前に間伐した場所にて、講師の藤井さんによる見立てで次のようなポイントをお話しいただきました。
- (間伐で)切り開いたところは、急激に環境変化が進んでいるため、次の表土が育つまで、表層の水脈整備や、泥止めを作ることで木の根が育ちやすくなる。
- 泥止めは、流れ落ちる雨水を一旦留めて、地中へ浸透させる役割がある。
- 空気と水の「入り口と出口」の整備が重要。山の上から下まで全体を見て、空気と水の流れを繋ぐ、地表と地下を繋ぐイメージを持つこと。
- 昨年(2023年)整備した沢は、水脈における「大きな本筋」のひとつ。これを整えると、周辺の細かい脈も整っていく。
- もし、大きい脈の整備が難しくても、その周辺にある小さな脈を細かく整えると、それが本筋(大きい脈)に振動として伝わっていく関係性がある。間伐した場所の水脈整備は「小さな脈」にあたる。
- 人の手でできる、女性でもできる細かい作業の積み重ねによって山の水脈は整えていくことができる。細かい作業であれば、時間と労力は負荷にならず、数を重ねることで確実に効いてくるもの。
手道具と竹炭を各自で持って、山頂まで足を進めます。
山頂にはナラ枯れの木が何本もありました。
2021〜22年頃から小渕の山(相模原市緑区関野地区)周辺にもナラ枯れが広がり、今は尾根筋でも多くのナラ枯れした木を見ることができます。
前日まで雨が降っていたにも関わらず、山頂の地面は乾いていて硬く、山が山頂まで水を吸い上げる力(または山全体で水を保つ力)がなくなっていることは明らか。
なぜ、そうなっているのか?
地中の見えない世界で起きている「何か」を考えることは難しいですが、「なんでだろう?」と問い続けること、観察して考えることは、その場所にとって「良いことは何か」を見つけることへ繋がります。
周囲を見渡せば良い状態の場所もあるので、良い場所とそうではない場所を見比べて違いを見出していくことが、その場を見立てる時のポイントとなります。
今回は、持参した移植ゴテで地面に切り込みや点穴を掘り、竹炭や枝、落ち葉を入れて、水が地中へ浸透していくきっかけ作りを全体的に行いました。
山頂から登山道を降りて、篠竹が繁茂し斜面が崩れかかっている場所を改善することにしました。
昔は畑だったところが放置され、3mくらいの高さの篠竹に覆われていたので、向こう側の沢と登山道まで風を通すように篠竹を刈り取り。
一面全てを刈り払うのではなく、風の通り道となるように部分的に刈り払うことで、急激な環境の変化を起こさず、適度な光と風を入れ、緩やかに環境を整えていくことになります。
刈り取った篠竹は、崩れて土が剥き出しになっている斜面を覆うように被せ、地面に差し込んだりして柵ませていくことで固定。
これにより斜面の乾燥を防ぐことができます。
登山道を横切るように溝を切り(横断水脈)、その溝が土で埋まらないように篠竹と細丸太を使って、水と空気の通り道が維持されるようにします。
この丸太を入れることで、登山道を流れてくる雨水を一旦とどめて、地中へ浸透させていく機能を果たしてくれます。
こちら↓は、立ち枯れた篠竹が道を覆うように倒れかかっていたので、手で折れるものを中心に取り払い、斜面の上の方へ風が通るようにしました。
一通り手入れをしたあとがこちら↓
道が広くなり、全体的にすっきり整った感じがしました。
こちら↓も作業後。
斜面変換線に水脈を入れることで、この場の空気と水の詰まりを改善できますが、今回は時間がなかったので次回以降の作業で行っていければと思います。
今年(2024年)2月に水脈、土留めを入れた場所から、ウバユリがたくさん生えていました。
植物に詳しい、講師の池竹さん曰く「ここのウバユリだけツヤとハリがあり、活き活きとしている。水脈の周りの土も柔らかくなっている。」とのこと。
作業によるBefore、Afterを体感できた貴重な場となりました。
今回の作業はこれで終了です。
参加者さんそれぞれが、様々な学びを持ち帰ることのできた講座となったようです。
4月以降はしばらく作業を続けていきますが、次回の講座は『ビオトープ作り』を行う予定です。
広場のぬかるみ改善に2年取り組んできましたが、何度やっても水が溜まってくるので、ここは湿地としてこの場にあるものだと捉え、湿地として活かしていくことしました。
講座の内容や日にちが決まったらお知らせしますので、しばらくお待ちください。