[レポート]24/11/17(日)藤野の今むかし巡り

2024年11月17日(日)、藤野の沢井・佐野川地区(神奈川県相模原市緑区)で、地域に根付く古民家や伝統文化を巡る日帰りバスツアーを開催しました。

本ツアーでは、築百年以上の歴史を持つ建築物や、地域の文化を継承する活動の現場を訪問しました。

以下に、特に印象的だった遠藤家と石井家を中心に、訪問先の魅力をご紹介します。

遠藤家:伝統建築と地域課題

ツアー最初の訪問地は、藤野駅からバスで5分ほど北上した沢井地区中里にある『遠藤家住宅主屋』でした。

遠藤家の家主さんからお話を伺いました
遠藤家の家主さん(写真中央、左手)からお話を伺いました

この家は、林業と養蚕を手がけ、昭和2年には繭生産番付「百人鑑」の上位に格付けされるなど、地域の中核を担った存在です。

家主さんからは、地域が直面している「若者の流出」や「住民減少、鳥獣害」といった課題についてお話を伺いました。

また、漆喰を使った蔵の耐久性についても触れ、「昔の人の知恵」の偉大さを感じさせられました。

2015年に改修を行なった蔵
2015年に改修を行なった蔵

2015年に改修を行った蔵ですが、その後は手入れが難しく、保存の課題が残るとのことです。

古民家の裏手にはかつて名木百選に選ばれた椿の巨木があったものの、現在は枯れてしまったとのこと。移り変わる自然の姿も感じるひとときとなりました。

石井家:300年の時を超える格式高い古民家

次に訪れたのは、宝永4年(1707年)に建てられた築300年の古民家、石井家です。

築300年を超える石井家の古民家
築300年を超える石井家の古民家

この家は、地域の景観要素として重要な存在であり、南斜面の素晴らしい立地に建てられています。

家の右手には「敷台玄関」と呼ばれる格式ある玄関があり、特別なお客様のために使用されていたことから、この家の由緒ある歴史が伺えます。

敷台玄関
敷台玄関

床の間は「日本で2番目に作られたもの」と伝えられており、家主のお母様がここで挙げた結婚式では、襖をすべて取り払い、80名もの来客を迎えたとのことです。

日本で2番目に作られたと言われている床の間
日本で2番目に作られたと言われている床の間

また、この家では正月に「天に向けて矢を射る」儀式を行い、魔除けや豊作祈願をしてきました。

玄関に置かれている弓
玄関に置かれている弓

さらに、宝永の大噴火の際には、富士山から降り積もる灰が家で保存されていたことが分かり、当時の人々の生活に密接に関わる出来事も知ることができました。

ガイドの奥様から石井家の歴史を色々お話しいただきました
ガイドの奥様から石井家の歴史を色々お話しいただきました

ガイドをしてくださった奥様は、築300年という節目を迎えたことを喜びつつ、長い年月を家族と共に過ごした家への愛着を語ってくださいました。

春日神社:豪華絢爛な伝統構造

次に訪問した春日神社は、日光東照宮の職人が藤野に移り住み、泊まり込みで建立した由緒ある神社です。

春日神社
春日神社

この神社の建築には釘が一切使われておらず、木材を交互に組み合わせることで制振効果を持たせる伝統技術が活かされています。

豪華で複雑な構造を持つこの神社は、かつて地域で養蚕が盛んだった時代の繁栄を象徴しています。

鮮やかな朱色が映えます
鮮やかな朱色が映えます

蚕の繭ひとつからは1,400メートルもの絹糸が取れることから、地域の人々は蚕を「お蚕さま」と呼び、1頭(とう)と数えるほど大切にしていました。

ここで作られた絹は、上野原、八王子、津久井へ運ばれ、多くの人々の暮らしを支えていました。

当時の文化や地域経済において重要な役割を果たしたこの場所は、今もその歴史を語り継いでいます。

the MILL:古民家再生の試み

かつて養蚕とお茶作りが行われていた建物をリノベーションし、地域の知恵を未来へとつなぐ活動拠点「THE MILL」を訪問しました。

改築中の建屋の前でオーナーのRichardさんからお話を伺いました
改築中の建屋の前でオーナーのRichardさんからお話を伺いました

現在は柱の老朽化に対応する工事が進行中で、周囲の整備を通じて地域資源を活用する計画が進んでいます。

※the MILLのコンセプトや完成イメージは、本記事文末にある資料(PDF)からご覧ください。

和田の里 体験センター:竹箸作りとうどん体験

昼食場所では、竹箸作りと手打ちうどんを体験しました。

参加者が自分で作った箸で食事を楽しむことで、自然とともに生きる楽しさを体感しました。

藍染工房:自然と調和した染色技術

地元で育てた藍を使用し、伝統的な方法で染色を行う藍染工房を見学しました。

水を多く用いる作業ですが、化学薬品を使わないため、地域の自然環境にも配慮されています。

石楯尾神社

ツアーの最後に訪れた石楯尾神社では、独特な歴史と建築技術に触れることができました。

神社の歴史や構造の詳細は、文末のPDF資料からご確認ください。

参加者の声

  • 藤野に暮らし始めて4年になりますが、日常の生活に必要な場所しかわかっていません。この里山ツアーに参加することでさらに藤野の地を知ることができ、とても貴重です。また参加したいと思います。
  • とても充実した内容で、次回もあるなら参加したいと思いました。住んでいる方のお話が聞けてよかったです。
  • 想像以上に楽しかった。藤野に住んでいても知らない事が多く勉強になった。
  • 「今」のMILL、「むかし」の石井家、いずれも実際の住人がいる(これから住む)方々のお話を直に聞く事ができて、古民家への思い、藤野への愛着を知ることができてよかったです。また、和田の里では体験が食事で、もてなしの心をいただきました。
  • 古い建築物を外から見ることはできても、内側から見る機会はなかなか無いので、楽しめました。
  • 今も人が使っている、キレイな古民家を見られた貴重な機会でした。また、他の参加者さんとの交流もできて楽しい時間でした。

次回開催に向けて

次回はさらに多くの参加者を迎えられるよう、アクセス面の改善や新たな訪問先の追加を検討しています。

藤野の歴史と文化をさらに掘り下げ、多くの方にその魅力を伝えていければと思います。

当日配布した資料

当日配布した資料はこちらです。

・遠藤家、石井家、春日神社、石楯尾神社についての詳細資料はこちら

・the MILLに関する詳細スライドはこちら(英文)

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